Qiita広告活用事例 | 分社後の認知拡大と採用活動にも貢献、Works Human Intelligenceが築く「持続可能な発信文化」

社名変更に伴う認知度の低下と、個人任せの発信文化という課題に対し、株式会社Works Human Intelligence(以下、WHI)はいかにして社員が自発的に記事執筆する組織になったのか。
「個人のキャリア資産にもなる」Qiitaを選定し、業務時間の公式認定や研修プログラム(オンボーディング)への組み込みなど、組織の力学で執筆への心理的ハードルを徹底的に取り除いた同社。あえて厳格なKPIを設けず「ゆる〜く、なが〜く、楽しんでいこう」を掲げて育んだ発信文化は、採用ブランディングの大幅な強化やリモート環境下での社内エンゲージメント向上といった確固たる成果を結実させています。
本記事では、WHIの上村氏・新村氏に、自発的な発信活動を定着させた2020年からの取り組みと、具体的な工夫について詳しく話を伺いました。
プロフィール
新村 北斗 / 株式会社Works Human Intelligence Product Div. DMO Dept./Product Div. CWS Dept.
SIerで5年ほど経験を積んだあと、自社サービスの開発をめざして転職。株式会社Works Human Intelligenceの前身の企業に入社後、クラウド時代への変化に伴い、SREなどを担当。2022年にDMO(Division Management Office)の責任者に就任。
上村 太郎 / 株式会社Works Human Intelligence Human Resources & General Affairs Div. 人事 Dept.
新卒で株式会社Works Human Intelligenceに入社後、10年ほどエンジニアを務めたのち、2020年に人事部へ異動。現在は全社のタレントマネジメントやAX推進などを担当。
新社名の認知向上と、個人依存だった発信文化からの脱却

── はじめに、貴社の概要と、Qiitaを活用しはじめる2020年ごろの社内のアウトプット文化について教えてください。
上村: 弊社は2019年に前身の会社から事業を継承する形で分社化し、株式会社Works Human Intelligenceとして新たにスタートを切りました。人事管理、勤怠管理、タレントマネジメントなど幅広くカバーする統合人事システム「COMPANY」を展開しています。
私は新卒として入社後、エンジニア職を経て人事部へ異動し、テックブログやQiita Advent Calendarの立ち上げを一緒に行ったことがきっかけで新村との交流が深まりました。
分社化に伴って最も大きなインパクトがあったのが、社名認知度の低下です。大手法人向けに自社プロダクトを展開してきた確かな実績はあるものの、新たな社名になったことで世間一般での認知度が下がってしまい、人事としては、まずこの社名認知度を高めてエンジニアブランディングを強化することが急務でした。
新村: 当時のWHIには、組織的に社外発信を行う仕組みや取り組みはありませんでした。一部の有志社員が個人で記事を書いたりイベントに登壇したりすることはありましたが、会社として依頼していたわけではなく、発信に対するメリットを提供していたということもありませんでした。
「会社だけでなく個人のキャリア資産にもなる」プラットフォームへ

── 情報発信のプラットフォームとして、「Qiita」を選ばれた理由は何だったのでしょうか?
新村: 外部にプレゼンスを発揮するための媒体として、オウンドメディア構築なども含めていくつか検討しました。その中で最終的にQiitaを選んだ一番の理由は、「書いた記事が会社だけでなく、エンジニア個人の資産にもなる」という点でした。
Qiitaは個人アカウントに実績が蓄積され、仮に環境が変わったとしてもそのまま自分のキャリア資産として持っていくことができますよね。「自分のキャリアのためになる」という点は、WHI開発の組織文化やエンジニアのモチベーションに最もマッチすると判断しました。
上村: 人事の立場から見ても、個人のスキルや発信実績が可視化され、それが巡り巡って会社の認知度向上やブランディングにも還元される。そうした双方にメリットがある循環を目指せる点が魅力的でした。
── 2020年4月にQiitaでの運用を開始され、同年12月には「Qiita Advent Calendar」にも初参加されています。この取り組みはどのような変化をもたらしましたか?
新村: 最初は「Qiita Advent Calendar」自体を知らなかったんです。12月にQiita Advent Calendarという面白い仕組みがあることを教えてもらい、企画内容を知ったのですが、「半強制かつ任意参加」という絶妙なバランスが非常に面白いと感じました。イベントというお祭り感の中で楽しく参加できる空気感ですね。
「やろうと言い出した手前、まずは自分が背中を見せなければ」と思い、私自身も枠を確保して記事を執筆しました。そうしたところ、社内で想像以上の反響が起きたんです。社内でのQiitaの認知度がすごく上がりました。最初は細々とスタートした取り組みでしたが、Qiita Advent Calendarをきっかけに発信活動が一気に加速し、その後は毎月コンスタントに10〜20記事ほど投稿されるようになりました。
── Qiita Advent Calendarを起爆剤として発信文化が加速したのですね。社内コミュニティの存在も大きな後押しになったとお聞きしました。
新村: ええ。社内には、自発的に生まれた読書会や技術勉強会といったコミュニティが20個ほど存在していました。当時はお互いの存在をあまり知らない状態だったので、リスト化してSlack上で情報を共有し、誰もが興味のあるコミュニティに参加できるように整えていきました。そのコミュニティの1つとして「テックブログコミュニティ」が自然発生的に立ち上がりました。
私はDMOの責任者ですが、管理側として徹底しているのは「基本的にはコミュニティの邪魔をしない」ということです。メンバーが「何かやってみたい」となった際に、予算の都合をつけて背中を押してあげるスタンスに徹しています。エンジニアが自主的に楽しむコミュニティ活動と、Qiitaという「個人の資産になるプラットフォーム」が噛み合ったことで、持続可能な発信サイクルが生まれていきました。
「業務内公認」から「オンボーディング」まで、心理的ハードルを力学で下げる仕掛け
── Qiitaの活用を開始されてから、社内のエンジニアが自然と記事を書くようになるまでには、どのような工夫や仕掛けがあったのでしょうか?
新村: 社内で新しい取り組みを始めるとき、エンジニアからは様々な心理的ブレーキがかかります。例えば「仕事中に書いても良いのか」「執筆は義務なのか」「自分の知見に発信できるものはあるのだろうか」「そもそも何を書けば良いかわからない」などですね。私たちは、そのような懸念をひとつずつ解消し、参加しやすい環境を整えていきました。
まず「業務時間中にやって良いのか」という疑問に対しては、「業務時間中にやって良い」と明確に宣言しました。それを口頭で伝えるだけでなく、日々入力する工数管理システムの中に「執筆」という作業項目を正式に新設したんです。会社として「執筆は業務である」とオーソライズ(正当化)したことで、最大の心理的ハードルを取り除くことができたと考えています。
上村: 人事の立場からも、一律にルールで厳しく縛るのではなく「安全に外へ発信する技術を身につけてもらう」というスタンスを大切にしました。セキュリティに関するガイドラインは作成していますが、厳格にしすぎて執筆のブロッカーになってしまっては意味がありません。そこで、セキュリティ上重大な問題に繋がりかねないものに対してはチェックを強め、リカバリー可能なものや、影響が少ないものに対しては緩める、という運用にしました。仮に小さな失敗があったとしても次に活かせる学習機会と捉えて、エンジニアの今後のキャリアを豊かにするためのスキル育成につなげています。
新村: 「何を書けば良いかわからない」という迷いに対しては、「読者が知りたいのは、誰かが何かに『つまずいた』エピソードですよ」と伝えています。日々仕事をする中で壁に当たったこと、それをどう克服したかという「自分のための振り返り」から書けば良いんです。
また、書く人を「マジョリティ(過半数)」にするための仕掛けとして、新入社員のオンボーディングに組み込みました。弊社のエンジニア研修はクエスト形式になっていて、約500個あるクエストの中から約300個をクリアする仕組みなのですが、その中に「Qiitaで記事を書いてみよう」というクエストを作ったんです。若手が主体的に発信している姿に刺激を受け、中堅やベテランエンジニアも「自分も日々の学びやこれまでの知見を気軽に発信していいんだ」と前向きな気持ちになり、心理的ハードルが下がっていきます。このサイクルが回ったことで、今では全エンジニアの約半数が執筆経験を持つ組織へと変化しました。
核心にあるのは「ゆる〜く、なが〜く、楽しんでいこう」の精神

WHI Tech Blog Projectのトップページ(社内サイト)
── Qiita Advent Calendarやテックブログの運営にあたって、何かKPIや目標は設定されたのでしょうか。
新村: KPIは設けませんでした。KPIを設けると「義務感」が生まれてしまい、楽しさが失われてしまいますからね。社内テックブログポータルのトップに掲げている「ゆる〜く、なが〜く、楽しんでいこう」という言葉こそが、私たちのテックブログにおける一番大切なコンセプトです。キャリア活動は今の会社だけでなく、前職や副業、プライベートなど様々な場面で培ってきたもの。自分の取り組みや知識を発信し、世の中からどんな反応が返ってくるかを知るのは単純に楽しいですし、視野も広がりますよね。
── テーマ設定はどのような意図でされているのでしょうか?また、同じテーマを継続されている理由も教えてください。
上村: 2022年から「身の回りの困り事を楽しく解決」というテーマを継続しています。エンジニアとして技術に触れることが楽しいと感じた原点は、身近な課題を自分の手で解決できた瞬間だと思うんです。一方で、直近では「大規模システムの保守・運用」といった少しディープなテーマも設定しました。弊社は大手法人向け統合人事システム「COMPANY」を30年以上運用してきた歴史があり、規模の大きな製品に対するノウハウがあります。そのような知見やノウハウを発信することは、この領域の悩みに直面している世の中のエンジニアにとっても価値ある社会貢献になると考えました。
── エンジニアの皆さんが継続して執筆したくなるような工夫もあれば、教えてください。
新村: モチベーション維持の仕組みとしては、毎月投稿された記事の中から投票で決める「ベストQiita賞」を実施しています。ただ、技術力の高いエンジニアばかりが選ばれると新しい書き手が参加しづらくなるので、内容に関係なく全投稿者から抽選で当たる「ランダム賞」も用意しました。どのような記事であってもスポットライトが当たる可能性がある仕組みを作ったことで、毎月コンスタントに記事が集まるようにしています。運営体制についても、同じメンバーで何年も続けると飽きが来ると思いますので、定期的にメンバーが入れ替わり、元からいるメンバーが新しいメンバーに引き継ぐ自律的な循環が生まれています。新しくメンバーになるのは、Qiita Advent Calendarに興味を持っているような人が多いですね。

WHI テックブログ 運用にあたっての考え
採用認知の拡大と社内エンゲージメントの進化
── 心理的ハードルを下げる数々の仕掛けによって、組織全体にはどのような変化や成果が生まれましたか?
新村: 先ほどお話しした通り定量的なKPIを定めていたわけではありませんが、嬉しかった成果としては「採用活動へのインパクト」ですね。新卒・中途を問わず、面接の中で候補者の方から「Qiitaの記事を読みました」「〇〇さんの記事を知っています」と言っていただける場面が非常に増えました。QiitaのOrganizationランキングでも常時トップ10にランクインする状態が続いており、社外に対する発信力や認知度は着実に高まっていると感じます。
上村: 採用ブランディングへの効果は極めて大きいと感じています。私自身も面接に入ることがあるのですが、候補者の方から「エンジニアの皆さんの記事をいつも見ています」と言われる頻度が格段に上がりました。中には「数年前に上村さんが書いた記事を読んだことがあります」とおっしゃる方と出くわしたこともあり、「社名変更後の認知度向上」という当初の課題は十分に達成できたと実感しています。
また、弊社は現在もリモートワーク中心の働き方を継続しており、隣のチームにどんな人がいてどんな関心を持っているのかが見えにくいという課題がありました。しかし、誰かがQiitaに記事を投稿すると、社内Slackのタイムラインに通知が流れ、様々なチャンネルで記事が紹介されたり、「この記事が良かった」と感想が飛び交ったりします。記事という「その人の思考や人となりを表すアウトプット」をきっかけに、チームを越えた自然なコミュニケーションや繋がりが生まれているのは大きな副産物ですね。
新村: アウトプットの場も、Qiitaでの執筆だけにとどまらなくなりました。記事執筆で発信力をつけたメンバーがデブサミ(Developers Summit)などの外部イベントに登壇したり、自社主催のテックカンファレンスを開催して外向けにノウハウを発信したりと、発信活動が多角的に広がりを見せています。特に今のAI時代だからこそ、ツールや技術そのものだけでなく「中にいる人間の魅力や熱量」を外部に届けていくことがますます重要になっていくと考えています。
「人間の自発性」を信じ、種火を守り育てることが成功の鍵
── 最後に、WHI様としての今後の展望と、エンジニア組織の発信文化醸成に悩む企業の方々へのアドバイスをお願いします。
新村: 今後の展望についても、私たちは変に気負わず「身を委ねる」スタイルを貫きたいと思っています。これまで運用してきて分かったのは、会社がコントロールしなくても、場さえ整えれば様々な面白い取り組みや繋がりが生まれてくるということです。だからこそ、これからも明確なKPIで縛ることはせず、「ゆる〜く、なが〜く、楽しんでいこう」というコンセプトとコミュニティの自由な空気を守り続けていきたいですね。
これから発信文化を作りたいと考えている企業様へのアドバイスがあるとすれば、「自発的な意思を尊重すること」です。発信文化の醸成がなかなか進まない主な原因は、業務上の過度な縛りや「業務中に書いて良いのか」「自分なんかが書いて良いのか」という心理的ブレーキだと思います。会社やリーダーがやるべきことは、仕組みやマインドの転換などによって障壁を優しく取り除き、発信のハードルを下げ続けることだと思います。
上村: 人事の立場からは、従業員の皆さんが発信してくれた記事や実績が、そのまま「その人のエンジニアとしてのキャリアの足跡(資産)」になっていく世界観を作っていきたいと考えています。発信活動と社内のキャリア支援・タレントマネジメントを滑らかに繋ぐことで、より良い機会を提供できるサイクルを目指したいですね。
文化立ち上げのコツとしては、組織の中に必ず存在する「種火となる人の想い」を大切にすることです。「これをやってみたい」と手を挙げたエンジニアの情熱を、会社視点だけで管理したり消したりしてしまうのではなく、寄り添いながら一緒に育てていく姿勢を持つ人が一人でも社内にいれば、コミュニティは必ず息長く育っていくはずです。
編集後記
「せっかくやるなら楽しく」という言葉が胸に響きました。「ゆる〜く、なが〜く、楽しんでいこう」というコンセプトが、Qiita Advent Calendar活用でも浸透しており、だからこそ多くの方々に、定期的に記事を書いていただけているんだと感じました。
発信が「個人の資産」にもなるプラットフォームを選び、投稿にあたっては社員の心理的ハードルを丁寧に取り除いていく。Qiita Advent Calendarで実現いただいたように、「個人のキャリアと企業の成長が循環する環境づくり」が、エンジニア採用・ブランディングにおいて大切になってくるのではないでしょうか。
Qiita広告でのプロモーションに興味をお持ちの方へ
「エンジニアの発信文化を育てたい」「Qiitaを活用して採用ブランディングや認知拡大を推進したい」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひQiitaにご相談ください。
貴社の組織課題や目的に合わせて、コミュニティとの最適な接点づくりをご提案いたします。
