Qiita広告活用事例 | 「グローバル標準」は通用しない?日本市場の解像度を上げるユーザー共創型マーケティング

AIコードレビューサービス「CodeRabbit」は、日本のエンジニア層からいち早く注目を集め、日本市場での本格展開をスタートしました。しかし、巨大看板や一方的なWeb広告といった「グローバル標準」のプロモーション手法だけでは、日本市場では響きにくいという課題がありました。
そこで同社は、企業からの発信のみならず「第三者のリアルな声」を重視し、「Qiita Advent Calendar」に協賛。製品のTipsやユースケースを募集した結果、キャンペーン期間中の日本からのアクセス数は30%増、トライアル登録数は過去3ヶ月平均の1.4倍という大きな成果を達成しました。
本記事では、日本市場のGTM(Go-To-Market)およびDevRelを担当する中津川氏に、グローバル本国との「市場解像度」のギャップを埋める戦略と、良質なコンテンツ資産を生み出すユーザー共創型マーケティングの裏側について伺いました。
プロフィール
中津川 篤司
CodeRabbit Inc. マーケティング部、デベロッパーアドボケイト
一般社団法人DevRel代表理事
プログラマ、エンジニアとしていくつかの企業で働き、28歳のときに独立。2004年、まだ情報が少なかったオープンソースソフトの技術ブログ『MOONGIFT』を開設し、毎日情報を発信している。2013年に法人化、ビジネスとエンジニアを結ぶエバンジェリスト業「DevRel」活動をスタートした。ソーシャルIDはすべて goofmint。
グローバル標準が通用しない?日本市場における「開発者向けマーケティング」
── CodeRabbitのサービス概要と、日本市場で本格的にマーケティングを展開することになった背景について教えてください。
中津川: CodeRabbitは、OpenAIやAnthropicなどのフロンティアモデルを活用したAIコードレビューサービスです。GitHubやGitLab上でプルリクエストを作成した際に、AIが自動でコードレビューをしてくれる仕組みを提供しています。 元々はインドのエンジニアがオープンソースとして開発したのが始まりで、現在はアメリカに本社を置いています。日本市場での本格展開の背景としては、初期から日本のエンジニアの方々が率先してCodeRabbitを試し、自主的にQiitaなどでブログ記事を書いてくださっていたことが大きいです。英語圏を除くと、日本語のコンテンツが非常に盛り上がっていたため、「日本でも本格的にマーケティングをやっていこう」という話になりました。
本国との間にあった「市場解像度」のギャップ
── 日本のエンジニアの方々の自発的な発信が、日本市場本格参入のきっかけになったのですね。その後、日本市場で認知獲得の施策を進めるにあたって、何か障壁に感じるようなことはありましたか?
中津川:私自身はずっと日本の開発者向けコミュニティに携わってきたので、私自身が日本特有の壁を感じることはありませんでした。しかし、アメリカやインドなどグローバルの責任者からすると、やはり「日本市場に対する解像度がすごく低い」という課題がありました。 グローバル市場でうまくいく施策を、そのまま日本に持ち込んでも成功するとは限りません。仮に期待通りの結果が出なかったとしても、何がボトルネックになったのかを的確に把握するのが難しいという課題がありました。
── 「市場解像度の低さ」ですか。具体的にはどのようなギャップがあったのでしょうか?
中津川: 分かりやすい例として、アメリカでは道路沿いに設置するような巨大な看板広告にCodeRabbitを出稿しています。しかし、日本では「この広告は、日本だとあまり響かないよね」と分かりますよね。なぜなら、東京で働くエンジニアの大半は電車通勤ですから。このように、市場環境の解像度が低いという課題がありました。
また、言語の壁も大きいです。アメリカやヨーロッパ、インドの人たちは基本的にみんな英語をメインの言語として使えます。しかし日本をはじめとする東アジアでは、まず母国語を第一に使用します。特に日本人は英語を話す機会が多くないため、「英語のコンテンツを提供しているのだから十分だろう」というスタンスでは通用しません。AIで単に翻訳すれば良いわけではなく、日本人にとって読みやすい形に整えなければならないのです。
── 情報収集のプラットフォームにも違いはあるのでしょうか?
中津川: はい、プラットフォームも割と違います。グローバルでは「DEV Community」や「Medium」などが有名ですが、日本だと「Qiita」のような独自の開発者コミュニティやプラットフォームが根付いています。日本に合わせたプラットフォームで情報提供していかないと、ターゲットには届きません。こうした現地の文化や文脈をすべてひっくるめた上で、「日本の解像度」を上げていかなければならなかったんです。
── そのような日本特有の市場環境や文化の違いについて、グローバルチームにはどのように説明し、理解を得ていったのでしょうか?
中津川: 私自身、英語が完全にネイティブのように話せるわけではないため、口頭では中途半端な説明しかできないだろうという自覚がありました。
そこで、詳細なドキュメントや提案書を作成して提出する形をとりました。まずはドキュメントを読んでもらい、「なぜ日本の市場には特定の施策が必要なのか」を論理的に説明し、その上で英語で補足説明をするというアプローチです。口頭のコミュニケーションと言うよりも「ドキュメントありき」で進めることで、本国のチームも腹落ちし、しっかりと理解を得ながら施策を進めることができました。
── 事実や論理に基づいてグローバルチームを説得し、日本市場に最適化された施策を進められる体制を築いていったのですね。
ユーザーの「熱量」を届ける。「Qiita Advent Calendar」を選んだ理由
── 日本市場での壁やギャップを乗り越えるために、様々なプロモーション手法を検討されたかと思います。その中で、「Qiita Advent Calendar」に協賛された最大の決め手は何だったのでしょうか?
中津川: 一番の理由は、Web広告のような企業からの発信ではなく、「ユーザー自身が語る価値の高いコンテンツ」を重視したからです。 ソーシャルメディアなどの広告も実施してはいますが、どうしても継続的な投資が必要になってしまい、投資効率の面であまりポジティブには捉えていませんでした。それに、私自身もそうですが、日本のエンジニアはバナー広告や検索連動型広告を警戒して、クリックを控えることが多いと感じています。
私が以前、自分の会社でお客様の開発者向けマーケティングを支援していた時も、検索連動型広告だと1アカウント獲得するのに1万円もかかっていたものを、ブログ記事を活用することで獲得単価を大幅に下げた経験がありました。そうした実体験からも、エンジニアに対しては公式の綺麗な情報ではなく、ユーザー目線でユーザー自身が語る「第三者のリアルな声」こそが圧倒的に価値があると考えたのです。

「第三者のリアルな声」こそが最大のプロモーション
── 確かに、エンジニアは一般的な広告に対して少し身構えてしまう傾向があるかもしれません。
中津川: 日本の市場では、マーケティングや広告に対して、「自分が騙されるのではないか」「企業にとって都合の良いことしか言わないよね」といった警戒心が根強くあると感じています。 日本では広告に対してあまりポジティブなイメージがないのかもしれませんが、それは過去に、「マーケティングといえば『4大メディアにいかに予算を割り当てるか』」というアプローチが主流だった時代が長かったことも影響しているのかもしれません。
── 日本特有の「広告への警戒心」について、グローバルチームにはどのように説明されたのでしょうか?
中津川: グローバルチームメンバーは、広告に対してそこまでの警戒感を持っていません。彼らは「ユーザーに楽しんでもらえるようなバズるコンテンツを作ろう」という発想が多いのですが、日本のエンジニアの心には刺さりません。
そこで、グローバルチームには「日本のエンジニアには、ユーザー自身がユーザーの言葉で語るコンテンツこそが一番響くんだ」という、ユーザー視点で語られるコンテンツの重要性を説明し、共感を得る努力を続けました。今では、彼らも「確かにそうだよね」としっかり理解を示してくれています。
── 企業からのメッセージよりも、同じエンジニアの等身大の体験談だからこそ、深い信頼に繋がるわけですね。
中津川: はい。エンジニアが自分の言葉で「実際に使ってみたらこうだった」「ここが便利だった」と語ってくれること自体が、最大のプロモーションになります。 また、「Qiita Advent Calendar」で訴求するにあたっては、CodeRabbitの「心理的ハードルの低さ」も相性が良かったと考えています。
── 心理的ハードルの低さ、とは具体的にどのようなことでしょうか?
中津川: 例えば日本のユーザーは、サービスを利用する際に「クレジットカードの登録」が求められると、心理的なハードルを高く感じる傾向があります。「気づかないうちに無料期間が終わって自動課金されてしまうのではないか」と警戒するわけですね。
しかし、CodeRabbitはオープンソースやパブリックなリポジトリであれば無料で使えますし、面倒なクレジットカード登録といった仕組みもありません。「2クリックで簡単にインストールできて、すぐに価値が得られる」というPLG(プロダクト主導)の強みがあるため、アドベントカレンダーの記事を読んだ方が、余計な登録作業なしにすぐ自分でも試してみることができるのです。この点は、ユーザーに自発的な行動を促す上で非常に重要な要素でした。
── 記事を読んで「面白そう」と思ったら、その熱量が冷めないうちにすぐ体験できる。まさにエンジニアコミュニティの熱量とプロダクトの特性がマッチして、「Qiita Advent Calendar」の場が選ばれたのですね。
初心者から上級者まで。間口を広げた二軸のテーマ設定と波及効果
── 今回の「Qiita Advent Calendar」では、「コードレビューの体験・Tips」と「ユースケース」という二軸でテーマを設定して記事を募集されました。この構成には、どのような狙いが込められていたのでしょうか?
中津川: CodeRabbitとしてスポンサードしているため、プロダクトに関することをテーマに入れたいという思いがありました。
1つ目の「体験・Tips」についてですが、実はCodeRabbitって、特別な設定を全くしなくても「よしなに」動いてしまうという特徴があるんです。でも、そこからもう1段階ドリルダウンして、「実際に使っていく中でこういう風に設定するともっと良いよ」とか「こう使えばさらに開発生産性が上がるよ」などの深いノウハウが、ユーザー同士で共有される状況を作りたかったんです。
── すでにある程度使い込んでいるユーザー同士で、活用スキルを向上させ合うことを狙ったのですね。もう1つの「ユースケース」についてはいかがですか?
中津川: もう1つの軸は、どちらかと言うと「今のエンジニアが抱えている課題感を顕在化させる」という目的がありました。 世の中には、我々がまだアプローチできていない方や、CodeRabbit自体を知らないエンジニアがまだまだたくさんいます。そうした方々も含めて、「コードレビューにおいて、みんな現場でどういう悩みを抱えているんだろう?」「その課題を、CodeRabbitならどういう風に解決できるんだろう?」といったことを記事を通して深掘りし、その結果をプロダクト開発へのフィードバックに繋げていきたいという狙いがありました。
製品へのフィードバックを生む「ユースケース」の共有
── 実際に投稿された記事の中で、期待通りだったことや、特に印象に残ったアウトプットはありましたか?
中津川: まず、嬉しかったのは、単に「触ってみました」「上辺だけ体験してみました」というレベルに留まらず、しっかりと技術的に掘り下げてくれた記事が多かったことです。シニアエンジニアの方々などが、独自の視点で彼らなりのTipsを用意してくださったのは、我々にとっても非常に貴重なアウトプットでした。
── 使い込んでいる上級者からの深い知見は、他のエンジニアにとっても大きな学びになりますね。
中津川: はい。一方で、記事にはもう1つ、「初学者向けの記事」も非常に価値が高いという側面もあリます。 私自身もそうですが、すでにプロダクトを使ってしまっている人は、良くも悪くもプロダクトに対する理解がすでにある状態なので、初学者の目線で記事を書くのがすごく難しいんですよね。「初学者が書ける記事」というのは、初学者の時にしか書けない貴重な資産なんです。
── 確かに、「初めて触った時のリアルな感覚」や「最初につまずいたポイント」などは、慣れてしまうと忘れてしまいがちですよね。
中津川: そうですね。世の中全体を見渡せば、CodeRabbitをすでに知っている人はごくわずかで、まだ知らない人の方が圧倒的に多いわけですよね。そのような広い層に対してアプローチしようと思った時、専門的すぎる深い記事だけではなく、初学者が初学者なりに書いたくれた「調べてみた」「使ってみた」という等身大の体験談こそが、広く読まれて共感を生む力を持っています。 ですから、深いTipsの記事はもちろんありがたいですが、初学者が書いてくださる「初学者向けの記事」も、それはそれですごく嬉しい、価値のあるコンテンツなんです。
── 最初のハードルを下げるテーマ設定によって、初学者のリアルな「使ってみた」記事から、シニアエンジニアによる「深いTips」まで、幅広い層からの多様なアウトプットが集まったのですね。
中津川: Qiitaというプラットフォーム自体が、初学者からベテランまで非常に幅広いユーザー層を抱えているからこそ、実現できたことだと思っています。結果として、様々なレベルのエンジニアによる記事が集まり、製品の認知拡大や深い製品理解に大きく貢献してくれたと感じています。

トライアル登録数は平均の1.4倍!良質な「コンテンツ資産」がもたらした成果
── 「Qiita Advent Calendar」 を実施した後の成果はいかがでしたか?
中津川: 12月のアドベントカレンダー実施期間中、日本からのアクセス数は通常時の30%増、トライアル登録数は過去3ヶ月平均と比較して1.4倍に増加するという明確な成果を得ることができました。 実は、当時の私はまだ外部のパートナーとしてマーケティングに関わっていたこともあり、最初は細かくトラッキングをつけていなかったんです。このインタビューのお話をいただいてからデータを取り直してみたら「ああ、こんなに増えていたんだ!」と後から分かったくらいでした(笑)。
── 素晴らしい成果ですね! この結果について、グローバルチームからはどのような評価がありましたか?
中津川: 基本的には私の方から「こういう記事が何本出たよ」といった報告を逐次行っていました。記事は日本語で書かれていますし、本国のメンバーが詳細な内容まで精査するのは難しいですからね。評価としては「Good job!」という反応くらいですが、日本市場でのポテンシャルを示す良い材料になったと思います。
── Qiita経由で登録されたユーザーの「熱量」や「定着度」に、他のチャネルとの違いは感じられましたか?
中津川: 比較データがないので断言は難しいのですが、CodeRabbitは手軽に無料トライアルができるプロダクトなので、アドベントカレンダーを機に登録して触ってみた方は、無料期間の範囲内で体験されていることが多いと思います。 逆にある程度使い込んで、深く探求して記事を書いてくださるような方は、キャンペーンの前からすでに登録してくださっているケースも多いですね。ただ、記事を書いてくださったことで、我々としては「コミュニティで喋ってくれる人」を発掘できたという大きな副次効果がありました。
Qiitaの記事投稿を通じたコミュニティ登壇者の発掘
── コミュニティで喋ってくれる人の発掘、というのは具体的にどのようなことでしょうか?
中津川: 「CodeRabbit User Group」というコミュニティを運営していて、毎回ユーザーの方に2〜3セッションほど語っていただく時間を設けているんです。その際の登壇者探しに、Qiitaに投稿された記事がものすごく役立っています。
例えば、ただメールで「登壇しませんか?」とアプローチしても、なかなかうまくいかないことが多いんですよね。でも、Qiitaなどでブログを発信している人に対して、「この記事のネタで喋ってください」とお願いすると、「もう1回は公開している内容だから大丈夫ですよ」と、快く引き受けてくださる場合が非常に多いんです。
── 「すでにアウトプットしている内容」だからこそ、登壇への心理的ハードルが下がるのですね。
中津川: はい。メールでお声がけする場合に比べたら、反応率は雲泥の差ですね。何かをアウトプットすることに気後れしない方というのは、やはりすでに一度はブログを書いた経験がある方だと思っています。 また、日本国内のユーザーは「顔出しをしたくない」という傾向が強いのですが、そうした特性も考慮しつつ、Qiitaのアカウントや紐づくソーシャルメディアを通じて直接アプローチできるのは非常にありがたいです。
「公式の中の人がちゃんと自分のブログを読んでくれて、その上で登壇をお願いしてくれた」というのは、ユーザーにとっても喜んでいただけるポイントなのかなと思います。
── 一時的なキャンペーンとして終わるのではなく、そこからリアルなコミュニティの活性化にも繋がっているのですね。
中津川: はい。それに加えて、Qiitaに投稿された記事は消さない限り残り続けますよね。Googleで「CodeRabbit」と検索した時に、ヒットする記事が100件なのか10万件なのかによって、エンジニアがツールを選ぶ際の「採用率」は全然違ってくると思っています。
また、例えば公式ブログに記事を書いても読む人が100人だとしたら、Qiitaでは2,000人くらいに読んでもらえる印象です。ユーザーにとってもQiitaのほうが「いいね」や「ブックマーク」がつけやすく、プラットフォームとしての特性が非常に優れています。だからこそ、検索結果に残り続ける「長期的なコンテンツ資産」として、良質な記事が蓄積されていくことは絶対にあった方が良いと考えています。

文化への敬意と開発者との信頼構築
── CodeRabbitとしての今後の事業展望についてお聞かせください。
中津川: AIの領域は技術の進化が非常に速く、先の予測が本当に困難な環境にあります。例えば、我々が連携しているフロンティアモデルの企業が、突然競合になるような機能を出してくることもあり得ます。まさに「片手で握手しながら、もう片手で競い合う」ような激しい変化が日常茶飯事です。 そうした不確実性の高い環境下において、一番強力な武器になるのは「開発者との強固な信頼関係」だと私は考えています。
── 変化が激しいからこそ、ブレない「信頼」が重要になるのですね。
中津川: はい。信頼の構築にはいくつかのフェーズがあります。プロダクト自体を通じた価値提供はもちろん、私自身が対面で築くフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション、そして今回のQiitaのアドベントカレンダーのように、価値ある情報を継続的に提供していただくことです。それらを通じて「CodeRabbitは信頼できるプロダクトだ」と感じてもらい、エンジニアの皆さんが継続的に安心して利用できる環境を提供していくことが、私たちの最も重要なミッションです。
変化の激しいAI時代だからこそ、ブレない「開発者との信頼関係」
── 開発者との信頼関係を築く上で、海外のツールを日本市場で展開する際に特に意識すべきことはありますか。
中津川: 最も大切なのは、「現地の文化を深く理解し、リスペクトする姿勢」です。ただ言語を日本語に翻訳したり、形式的なイベントを開催したりするだけでは不十分です。 例えば、海外からいきなりやってきて「私たちのプロダクトは最高だ!」とアピールしても、日本のエンジニアからは少し遠巻きに見られてしまいますよね。また、仮に「イベントをやりました、100人集まりました」と上辺だけで喜んでいても、それでは単に花火がポンと上がって終わるだけで、継続的な関係構築にはつながりません。
── 商習慣やコミュニケーションの温度感も、国によって大きく異なりますよね。
中津川: おっしゃる通りです。例えば、アメリカ本国の営業スタイルは非常に積極的で、初回のメールから「オンラインミーティングをしましょう」と直接的にアプローチしてきます。しかし、日本の商習慣においてそれは「少し強すぎる」と受け取られかねません。まずは関係性を作ってから提案に入るのが自然です。また、メディア選定や施策を打つ際にも、現地の文脈を理解していないと炎上リスクを伴います。だからこそ、現地の温度感を肌で理解し、適切に調整できる人材を置くことが不可欠なのです。
── 最後に、海外ツールの日本展開や、開発者向けマーケティングに悩んでいる担当者の方へ、アドバイスをお願いします。
中津川: 「市場の解像度を上げること」、そして「自ら現地の文化を学ぶ姿勢を持つこと」です。 現代はネットで何でも調べられると思いがちですが、実はそうではありません。例えば先日、ある海外企業のトップが来日して大きな発表をした際、その内容を英語のニュースで探そうとしても、日本のGoogle検索からは日本語の情報しか出てきませんでした。これは逆も然りで、海外の人がアメリカから日本の情報を検索しても、現地のリアルな情報は手に入らないのです。
── オンラインの検索だけでは、本当の市場の姿は見えてこないのですね。
中津川: そうなんです。現地に来て、現地のプラットフォームに触れ、自分の足で情報を探してトライしていかないと、解像度はいつまで経っても上がりません。それを怠ると、日本ではあまり使われていないプラットフォームで求人を出してしまったり、現地の文脈に合わないプロモーションを打ってしまったりと、的外れな施策をやりかねません。
日本語を流暢に話せるかどうかよりも、その国の文化やエンジニアコミュニティを真摯に学ぼうとする姿勢があるかどうか。それこそが、マーケティングを成功に導く最大の鍵になると思います。
編集後記
今回のインタビューで最も印象に残ったのは、「日本市場の解像度を上げ、現地の文化をリスペクトする」という中津川さんの言葉です。海外ツールの日本展開に限らず、あらゆる開発者向けマーケティングにおいて、この真摯な姿勢は欠かせません。
一方通行のメッセージではなく、ユーザー自身が自然と語りたくなる「場」を提供する。そして、第三者のリアルな熱量を「コンテンツ資産」として蓄積していく。AIによって技術トレンドが激しく変化する時代だからこそ、コミュニティと誠実に向き合い、ブレない信頼関係を築くことこそが、最も強力なマーケティング戦略になるのだと強く感じさせられるお話でした。
Qiita広告でのプロモーションに興味をお持ちの方へ
「エンジニアに届くプロモーションをしたい」「自社の良質なユースケースを増やしたい」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひQiitaにご相談ください。
貴社の製品・サービスに合わせて、コミュニティとの最適な接点づくりをご提案いたします。
