人事1年目から使える! 〜人事未経験からエンジニア組織を大きくするためにやったことセミナーレポート

「エンジニア採用を行うことになったが、何から着手すべきなのかが分からない」

「どんなことに気をつけるべきなのか不安だ」

こんなお悩みを持つ採用担当者は、少なくないのではないでしょうか。多くの採用担当者はエンジニア経験がないであろうからこそ、進め方での悩みも多い物です。

そこでQiita Jobsでは、2021年6月30日に「人事1年目から使える採用手法〜人事未経験からエンジニア組織を大きくするためにやったこと〜」というタイトルでセミナーを実施しました。これは、採用人事として求められる基礎的な採用知識や採用実務に関する情報、およびエンジニアの技術や職種理解を深めるために実施すべきことをまとめた「人事1年目から使える採用手法〜人事未経験からエンジニア組織を大きくするためにやったこと〜」をもとに解説していったものです。

特に登壇者である溝呂木愛氏は、未経験かつ「ひとり人事」として採用人事のキャリアをスタートしており、現職の株式会社iCAREでも「ひとり人事」として採用業務全般を担当されています。
 

本記事では、こちらのセミナー内容についてレポートします。エンジニア採用を担当する採用担当者や経営者、これからエンジニア採用をはじめるところといった方などは、ぜひご覧ください。

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登壇者プロフィール

溝呂木 愛(もぞろき あい)
株式会社iCARE
Corporate Div. 採用人事

栄養士育成専門学校を卒業後、新卒でSES企業にエンジニアとして入社。 いくつかのIT系企業で法人営業、カスタマーサクセスといったビジネス職を経験後、株式会社カラダノートで採用人事にキャリアチェンジ。 未経験かつ一人採用人事としてビジネス職からエンジニア職まで幅広く採用を担当する。2021年6月より株式会社iCAREにて一人目の採用人事としてジョイン。

採用の「なぜ」を把握・理解することの大切さ

溝呂木:まず初めに採用人事として大切なことは、採用の「なぜ」を把握しておくことだと考えています。なぜそのポジションなのか、なぜ今なのか、そして採用したらどうなるのか。

よくあるのが、会社からの採用オーダーに対して、いきなり手法から入ることです。でもそれだと採用が間延びしてしまい、また間違った人が来てしまうことにもなります。ここでいう間違ったとは、「今このポジションじゃないよね」ということです。

私自身、このような経験を経て、会社の採用オーダーの背景をしっかりと確認するようにしました。そして、そこを徹底的に突き詰めていくと、採用ペルソナがよりはっきりするようになり、また採用以外の手法で課題が解決する場合もあります。例えばツールを入れれば問題ない、みたいなことです。

溝呂木:例えばこちらは、モバイルアプリのエンジニアを採用したい会社3社にヒアリングした結果となります。ここから見てもお分かりの通り、各社目的が異なり、緊急度や採用した際のメリットが変わってきます。

なぜエンジニア採用は難しいと言われるのか

溝呂木:今、エンジニア採用は難しいと言われています。その理由について私なりの考えをお伝えすると、ここ10年ほどの間にスマートフォンが普及し、多数のSaaS企業が誕生するといった流れもあって、全体的なエンジニア需要が高まっていると言えます。またビジネス職と違い、エンジニア職の人口は極端に少なく、また優秀なエンジニアほどリファラルやダイレクトスカウトなどで転職市場には現れないまま転職をしていくパターンが多いので、より難易度は高まっていると感じます。
あとは、非エンジニアである人事がエンジニアを採用しようとすると、どうしても「技術の壁」にぶつかってしまい、なかなか採用が上手くいきません。
このような背景から、各社が口を揃えて「エンジニア採用は難しい」と言うようになっていると思います。

溝呂木:そんな中で、採用人事として求められることをここに挙げます。特に後半の「エンジニアリングへの理解」については、ここ数年で特に重視されており、エンジニア採用の経験の有無が市場価値に結びついていると感じます。年収ベースで150万円ほど上がって転職したケースもあります。

溝呂木:エンジニア採用のキャリアがなかったとしても、Qiitaさんがすごくためになるホワイトペーパーを出しているので、ぜひ読んだ方が良いと思います。

何から着手すべきか

情報収集や知識のインプットを徹底的にやる

溝呂木:まずは、情報収集や知識のインプットです。本はものすごく読みました。とは言え、難易度の高い技術書を読んでも基礎知識ができていないので、「これからプログラミングを始める人」みたいな感じのものでエンジニアリングの基礎知識を上げていきました。

あとは、社外向けにオープンで勉強会を開催している会社も多いので、そういうところに参加してみるのも良いでしょう。ちなみにiCAREでも、connpassで月に1回のペースで勉強会を開催しています。

--具体的にどのような効果がありましたか?溝呂木:まともに会話ができるようになったのが大きいですね。お互いにストレスなく会話ができるようになってきました。あとは候補者とのコミュニケーションでも、より解像度が高い会話ができるようになりますね。「人事でここまで分かるんなら、この会社はすごく進んだ技術があるんじゃないかな」とも思ってもらえるわけです。

人事だけではなくエンジニアを巻き込み体制を構築する

溝呂木:次は体制面です。時には人事が表に立って対応することも必要ですが、基本的には、皆さんの進捗管理をして、事業部メンバーが滑らかに採用活動に注力できることに徹します。その上で、採用目的(採用目標ではなく目的)を達成するために、与えられたリソースを使い倒していくことになります。
ちなみにiCAREでは、採用責任は人事ではなく事業部がもっています。なので、人事としては事業部を徹底的に信用し、役割を切り分けています。面談・面接や魅力づけは徹底的に現場でやってもらい、進捗管理は私がやっています。つまり、私としては、人事はまさにPMだと言えると思います。

採用オーダーに対して解像度を上げ、ペルソナを決める

溝呂木:普段私はVPoEとCTOとよく会話をするのですが、それ以外にも現場メンバーと「どんな人と働きたい?」と、こちらもよく話をするようにしています。と言いますのも、現場が求めるエンジニアと役職者が求めるエンジニアとでは、若干違うこともあるんですね。だからこそ、先ほどから再三お伝えしている「なぜ」を突き詰めて、現場エンジニアとボードメンバー、そして人事で共通認識のペルソナを定めることが大切になります。

--ペルソナ設定では、フワッとした感じが残ることも多いと思うのですが、そこを明確ににする時に意識されていることはありますか?溝呂木:そもそもですが、最初からペルソナは絶対に固まらないです。だからこそ、まずは最初にできたペルソナに則って、ダイレクトリクルーティングのスカウト対象者を10名ほどピックアップします。その状態で一度セールスに戻すと、「ズレている」だとか「そもそもこんな人いないんじゃないか」みたいなフィードバックをいただけるので、そこからだんだんとシャープになっていきます。

地道な作業

溝呂木:最後は、もう地道な作業をひたすらやります。求人票の改善や、露出を増やす施策などですね。この辺りは、最初にお伝えした「情報収集や知識のインプット」と同じで、人事一人でできることかなと思います。

溝呂木:こちらにおすすめのインプット例を記載したのですが、番外編にも記載した、自社エンジニアに入社理由や求人票の改善点をもらうことは、非常に大事です。コミュニケーションを取るという観点でも、必要なアクションかなと思います。

持っているリソースと優先順位

溝呂木:次は持っているリソースと優先順位です。私自身、100人以上の組織であるiCAREで唯一の採用人事なので、リソースは非常に限られています。
その中で、人・もの・お金・知財という観点で優先順位をつけたものが以下となります。緑色になっている部分が弊社で優先順位の高いものになっていまして、これは他社さんでも一緒なのではないかなと思っています。

溝呂木:まずは「人」です。ここは人事がコントロールできる部分です。

例えばあるエンジニアが二次面接に進むケースにおいて、その候補者が求めていると思われることが明らかになっている場合は、そこに誰をあて込んで候補者に魅力づけをするのかを考えたりして、ふんだんにリソースを使用していける部分かなと思います。

また知財については、運用次第で抜群に伸びる可能性があると思うので、力を入れて運用していくと、ボディーブローのように半年後くらいから圧倒的に効いてきます。

--具体的にどうやって運用すればよいのでしょうか?溝呂木:まずは「SNS」ですが、エンジニアはTwitterにたくさんいます。私して彼らもTwitterで情報収集しているので、Twitterでの発信は重要です。

次に「Techブログ」です。とても大事なアウトプットではありますが、技術一辺倒になりすぎないようにしましょう。温度感が採用選考の時に上がらないことになるので、インタビューや失敗談なども織り込むと良いでしょう。そして、トレンドの技術を取り入れている場合や新しいツールの導入、自社独自のユニークな施策があれば
、それも記事で打ち出すと良いでしょう。

最後は「採用広報記事」です。例えば、プロダクトに関して何かしらのリリースをした場合、裏側で動いている人が必ずいるので、そこに関わる人のホンネを書くと、非常に興味を持たれやすくなりますし、PVや温度感も上がります。舞台裏ドキュメントとしてぜひ書いてみましょう。

実際にやってみた施策と戦略の立て方

溝呂木:それでは、実際にやってみた施策と戦略についてです。
実際にあった事例として、SREを募集しようとなっても、全く母集団形成ができないことがありました。その時の仮説検証と改善のフローが以下となります。

課題把握

溝呂木:まずは課題把握ということで、そもそもエントリー数自体が少ない状況で、かつエントリーした人と話をしていくと、何の会社かも分かっていないケースが多かったです。「SREという文字を見てきました」という話を聞いて、そもそもコンテンツが弱いんだな、ということが分かるわけです。その上で、課題に対する「ゴール」を定めます。

仮説

溝呂木:次に、課題に対するゴールについて、自分なりの仮説を立てます。ここにも書いてある通り、「月に○件の露出やスカウトを送付すれば母集団が○%UPする」といったものです。特に、数字で測れる物だと定量的な観測ができるようになるので、より細かく具体的な数値目標を立てました。

実証

溝呂木:そして実際に実証をしていくことになるのですが、ここで大事なことは、数値を必ず取っておくこと。送ったスカウト数や求人票更新回数など、数値を取れるものは取っていって、歩留まりのあるデータを出していき、定めた数値目標が達成できるところまでもっていきましょう。ここで達成できていないと、後の反省が生きないことになるので、達成はマストです。

反省

溝呂木:実証ができたら、その際に起きた反省点を洗い出します。ただ結果が出た/でないではなくて、なぜ結果が出たのかについて、定性/定量の両軸で把握するようにしましょう

改善

溝呂木:そして最後は、反省内容をもとにした改善です。この改善をもとに、また実証を繰り返していき、課題が常に解決されている状態にします。
この仮説検証と改善の繰り返しについては、以下がポイントだと考えています。

--ちなみに、母集団からの成約率は何%を目標とするべきでしょうか?

溝呂木:数字は会社によってバラバラだと思うので、直接のお答えにはなっていないのですが、賛否両論があると思いますが、母集団は極力少ない方が良いと思います。極端な話、1人でスカウトを送ってその1人が採用できたら良いですよね。なので、そもそもですが母集団という数字をあまり見ない方が良いかなと思います。それよりも、応募者からの成約率という観点で見た方が良いでしょう。

中長期的な採用施策の成功に向けて

今回は「人事1年目から使える採用手法〜人事未経験からエンジニア組織を大きくするためにやったこと〜」というテーマで、採用人事として求められる基礎的な採用知識や採用実務に関するノウハウについてお伝えしました。大前提として、採用の「なぜ」を理解・把握した上で、仮説検証から改善までを愚直に繰り返していくことが、中長期的な採用施策の成功に結びつくと言えるでしょう。

Qiita Jobsでは、今回のような採用担当者に役立つオンラインセミナーを定期開催しております。興味のあるものがあればぜひご参加ください。

取材/文:長岡 武司

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