人事と現場がONE TEAMで動く、エイチームの「スクラム採用」 〜エンジニア採用戦略とブランディングセミナーレポート

「エンジニア採用を加速させたいけど、どうやって社内体制を作れば良いのかわからない」
「現場エンジニアをうまく巻き込めていない」

このようなお悩みをもつ採用担当者は、少なくないのではないでしょうか。ここ数年で企業のエンジニアニーズが飛躍的に高まり、エンジニア採用が困難だと言われる時代だからこそ、効果的で効率的な採用体制の構築が必須な状況だといえます。

そこでQiita Jobsでは、2021年5月26日・27日の2日間にわたって、「エンジニア採用戦略とブランディングを大解剖」というタイトルで、株式会社エイチームの取り組み事例を紹介・解説するセミナーを実施しました。

本記事では2日目コンテンツとして、株式会社エイチームの人事部キャリア採用グループでマネージャーを務め、採用戦略全般やキャリア採用業務を担当する小笠原安里子による「人事と現場がONE TEAMで動くエイチームのスクラム採用」セミナーについてレポートします。採用体制の構築や、現場エンジニアの巻き込み方に悩まれている採用担当者は、ぜひご覧ください。

登壇者プロフィール

小笠原 安里子(おがさわら ありこ)
株式会社エイチーム 人事部 キャリア採用グループ マネージャー

2008年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒入社。転職支援事業における法人営業、キャリアアドバイザーを経て、未就業者支援事業の企画・運営、関連会社での人事など、HR領域全般を幅広く経験。2017年、エイチームに入社。ライフスタイルサポート事業、EC事業、コーポレート部門の中途採用全般を担当。2020年6月より新卒採用も兼務し、キャリア・新卒両グループのマネジメントにも従事。

株式会社エイチームとは

名古屋に本社を置く総合ITベンチャー企業。主にWebメディアを展開するライフスタイルサポート事業と、スマートデバイス向けのゲームアプリを展開するエンターテインメント事業、そして自転車の通販を展開するEC事業の3軸で、様々なインターネットサービスを提供しています。

エイチームの採用体制とエンジニア情報

ーーまずはエイチームの採用体制とエンジニア情報についての説明をお願いします。

少数精鋭の採用体制

小笠原:エイチームでは人事部の中に採用グループがあり、キャリア採用と新卒採用に分かれています。特にキャリア採用では全社で200ポジション程を募集することもあり、採用担当者の数(それぞれ2.5名)の割には、なかなかの採用規模であることが分かります。
ちなみに弊社では、自社ホームページやダイレクトリクルーティング、採用イベント、リファラル、エージェントなど様々なアプローチで施策を行っており、私は両グループのプレイングマネージャーとして、それらの施策を統合的に見ている存在です。

--ここまで少数精鋭だと、役割分担はどうされているのですか?

小笠原:新卒はわかりやすく、フロント部隊とバック部隊でそれぞれ一人ずつに分かれています。キャリア採用については、事業によって分けています。具体的にはエンターテインメント事業担当が一人で、そのほか事業部のフロントが一人(私)です。あとは、それぞれミドルとバックに半人ずつついてくれている、という形になります。

エイチームのエンジニア情報

小笠原:次に、エイチームのエンジニア情報です。同社では全体の20%がエンジニアで構成されていて、半分はWebエンジニア、もう半分はゲームプログラマーとなります。
採用比率で見てみると、エンジニアは全体の13%を占めており、その応募経路を見てみると、ダイレクトリクルーティングとエージェントが各40%とメインであることがわかります。

--エイチームの全体の採用コストは、金額ベースでどれくらいなのでしょうか?

小笠原:昨年の実績ですと、全職種の平均が70〜80万円ほどで、エンジニアだけだと55万円ほどですね。

--全体の平均よりもエンジニア採用は金額が低いんですね!一般的には平均よりも高くなる傾向だと思うのですが、低いのはなぜなのでしょうか?


小笠原:基本的にはダイレクトリクルーティングを頑張っているというのはあります。 これは昨年のデータなのですが、今年だともうちょっとエージェントよりもダイレクトリクルーティングの方が、肌感としては増えている印象です。

エンジニア採用の進め方

小笠原:次はエンジニア採用の進め方について。一般的に採用活動は、「ヒト・モノ・カネ」どのリソースをどう活用するか、という点に収れんされることになります。

エイチームの場合、まずカネの部分については、採用コストはできるだけ抑えたいことと合わせて、年収で勝負をしないようにしています。年収で勝負!はエイチームの理念にマッチしないし、お金をかけたら採用できるという保証もないので、このようなアプローチはしないようにしています。次にモノの部分について、先ほどご覧いただいた通り有益なツールは既に使っている中で、数を増やすことが成果最大化につながるとは限らないので、モノを増やすという考えもないと言います。

最後はヒトです。同社は採用担当こそ少数精鋭ですが、エンジニア自体はたくさんいて、採用に協力しようという前向きな文化が形成されています。また対人であれば、自らのアプローチで打開できる可能性があるので、他の2つのリソースと比べて、同社では相対的にヒトに大しての投資を強化して採用活動を進めている状況となります。

--小笠原さんが入社された時から、このような体制・状態だったのでしょうか?

小笠原:私が入ったときは、とにかくいろんなツールがある状態でした。なので、私の方ではそれらを取捨選択して整理していきました。とはいえ、協力したいという文化はもともとあったので、整理したツールをもとに改めてコミュニケーションを図りにいきました。

小笠原:その結果として、同社では現在、キャリア・新卒ともに現場巻き込み型での「スクラム採用」を実施しています。

具体的には、広報・採用企画立案・ターゲット設定などは採用グループが主導し、書類チェックや面接といった選考対応は現場主導で進められています。特に母集団を形成するために、採用グループから現場サイドに対して、イベントなどにも積極的に協力を依頼しています。

--スクラム採用って、どうやって始めるのでしょうか?小笠原:最初から「さあ、スクラム採用をやりましょう」という形で始まったわけではありません。結果的にそうなっているのが正直なところです。

すべてのフローで採用グループは関わるのですが、その頻度や関わり方などについては、各所と連携しながら臨機応変に対応しています。

エンジニアとの協業方法

ーーそれでは、具体的にどのようにしてエンジニアと協業したら良いのかでしょうか。

小笠原:まずは大前提として、コミュニケーションだなと。私自身、非エンジニアなのでエンジニアリングに詳しいわけではありません。でも最低限として、応募者の書類を見たときに、誰にどういう形でもっていけば良いか判断できる程度の知識は必要です。なので、入社直後から半年間ほどは、とにかくいろんなエンジニアと話しました。これは私の所感ですが、エンジニアはエンジニアリングのことを聞かれるのが好きなので、雑談の中での採用に関することも自然と聞いたりと、オン・オフを混ぜながらコミュニケーションをしていきました。

あと、キーマンとの関係性を作ることも重要です。それによって、頼れるところは頼るように割り切っていきました。求人票に記載するスキル要件や詳細な業務内容などは、エンジニアに任せた方が、より良いものになります。

ーーまた、定量的・客観的な情報を伝えることもポイントということでしょうか。

小笠原:エンジニアには定性情報だけでは刺さりません。応募数や移行率などの数字はしっかりと伝えるようにしています。

あと、第三者視点からの情報を伝えることも大事です。市況感や他社事例、エージェントからのフィードバックも伝えることで、採用担当が独りよがりで言っているわけではないという後ろ盾になって、納得感が高まることにもつながります。

--これらの情報は、何か定例会などを設けて伝えているのですか?

小笠原:いえ、どちらかというと「聞かれたときに答える」というケースが多いです。日々のコミュニケーションの中でふと聞かれるので、いつでもしっかりと答えられるように、自分の中で準備をしておくことが、地道ですが大切なところだと考えています。

前提にあるエイチームの「文化」

小笠原:一方でこれらを実現するためには、エイチームの文化が根底にあります。そもそもエイチームにはお互いを認め合う・助け合う文化があり、週1回の全社会議でこれらをお題にした社員スピーチもあるなど、経営理念やそれを体現する「Ateam People」へ定期的に触れる機会があるので、自然と浸透していると感じます。

また、採用において大切にしたい想いや求める人物像などについて、経営陣から社員に直接メッセージングされる機会もあるので、採用に対する「ジブンゴト意識」を持ちやすい環境にもなっているわけです。

--こういう意識や文化は、短期間ではなかなか醸成されないですね。

小笠原:そうですね。だからこそ採用担当は、経営陣や現場とのコミュニケーションを継続する「草の根活動」が、特に大切だと言えます。

現場エンジニアと採用担当の業務分担比率

小笠原:具体的な役割分担としては、上グラフの通り。スキルや技術の詳細に関わる業務以外は採用担当がもつのが良く、採用状況のフェーズによっても施策やツールはコントロールするのがポイントだと言います。

--これまで成功ポイントなどを色々と聞いていきましたが、逆に失敗ケースなどはあるのでしょうか?

小笠原:一つあるのは、現場に任せすぎると崩壊する、ということです。

いますぐに人が欲しいというフェーズの時に、使うツールとかを見誤ってしまい、現場にすごく工数のかかるお願いをしてしまったことがありました。現場としてはやろうとはしてくれるのですが、時間を割くことがなかなかできないので、何回お願いしても完結しない状態になりました。

採用のフェーズを見極めて、使うツールを最適化し、任せるべき部分だけを現場に任せるように採用担当側がしっかりとコントロールすることが、すごく大切だと実感した一件でした。

今後のエンジニア採用の展望

ーー最後に、今後のエンジニア採用の展望についてのコメントをお願いします。

小笠原:まず、エージェントは淘汰されるというのは間違いないと思っています。正直、どのエージェントというのは私はないと思っていて、結局は担当さんにつながってくることになると思います。なので、複数のエージェントをエイチームでは使っていますが、信頼できる人は一握りで、その人とどう付き合うかという関係構築が大切になってくるため、人で見極めた方が良いと思います。

また、働き方などの世の中のトレンド・変化に適応していくことも重要です。もしかすると、私たちが想像もしないようなエンジニアの目指したいキャリアも生まれてくるかもしれないので、そういう情報をいち早くキャッチして、会社として早々に準備をしていくことが、これまで以上に求められることになると思います。

そして、それに絡んで、エンジニアの「自給自足」も大切です。つまりは育成を含めて、エンジニアを自前で準備するということです。いかにエージェントやその他のツールに頼ることなくエンジニアを自給自足できるかが、今後の採用力強化につながっていくと思います。

ーーちなみにエイチームならではのポイントなどはありますか?

小笠原:エイチームの場合は、エンジニア内の採用キーマンの確保も大切です。エイチームの場合はグループ採用なので、各社に採用協力者がエンジニアにいるのですが、そこをひとまとめにできる人がいるといいな、と思っています。エンジニアだけど採用担当を統括する人が一人いると、もしかしたらエンジニア全体の採用枠をどう進めるか、という形で舵を切る方向性にもなるかもしれません。
いずれにしても、これまで以上にエンジニアとの協業を深めて、より良い採用ができる体制を整えていきたいと思います。

中長期的で持続的なエンジニア採用に向けて

今回は「人事と現場がONE TEAMで動くエイチームのスクラム採用」というテーマで、エイチームが実践する現場エンジニアとのコミュニケーションポイントや、前提となる企業文化の醸成・運用についてお伝えしました。本記事の内容を理解し、現場との協業体制への取り組みを開始・強化していくことで、中長期的にはエンジニアの自給自足の話にもあったような、持続的なエンジニア採用へとつながっていくことになります。 Qiita Jobsでは、今回のようなオンラインセミナーイベントを定期開催しております。本テーマ以外にも、GitHubの使い方やスカウト対象の広げ方、P&G流マーケティング思考の採用活動への活かし方など、幅広いテーマで開催しているので、興味のあるものがあればぜひご参加ください。

取材/文:長岡 武司

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